冷たい雨
 何故なら夜間のバイトは日中のバイト代よりも時給をあげなければならないらしく、それならば人件費を削ってバイト代と言う名目の小遣いを僕に渡して手伝いをさせたかったのだと言う。
 確かに時給に換算すると僕の夏休みのバイト代は格安だ。でもいつもの小遣いとは別枠のバイト代という名の小遣いは、高校生で学校からバイトが禁止されている身分としては非常にありがたい。
 学校側には、家業の手伝いと言えば言い逃れは出来るし、両親だって口裏を合わせてくれる。

 この日も学校から帰宅すると、僕は制服から着替えると昼食を摂り、補習で出された課題と夏休みの宿題に取り掛かっていた。
 まだらに日焼けしている腕も、本当にどうにかしたいけれど、日中に課題を片付けなければならないので日焼けしに行く暇なんてない。考えた挙句、僕は自宅でランニングシャツを着て下は短パンで、家の中で日当たりのいい部屋で課題をする事を思いついた。これなら少しでも焼けていない肩や二の腕も日焼けするだろう。

 カーテンを閉めて遮光した方がエアコンの効き目はいいけれど、それをすると日焼け出来ない。運動部に入っている同級生も結構日焼けの跡がくっきりと残っている。でも夏休みに海だのプールだの行って日焼けして新学期を迎えるに違いない。
 僕も出来るならそうしたいけれど、生憎夏休みの間、課題が多すぎるから日中遊べる余裕のある同級生はいなさそうだし、僕自身も夕方から自宅の手伝いがある。
 交流の家に行ってから、クラスメイトとの距離も少し近くなり、話しかけてくれる友達も出来た。これもひとえに瀬戸さんのおかげだろう。

 補習が始まって瀬戸さんも学校に登校しているものの、どうやら暑さが苦手なのか、夏バテ気味で結構保健室のお世話になっている。あれだけ線が細いと、きっと体力もみんなと比べたらない方だろう。熱中症にならないか心配になってしまう。
 最近の僕は、瀬戸さんの一挙手一投足が気になって仕方がない。

 何故だろう。

 この学校に入って一番最初に絡みのあった子だから?
 クラス役員に無理矢理推薦されて押し付けられたから?
 僕が教室を飛び出した後に倒れたと聞かされたから?
 クラスのみんなと距離を置いていた僕に、常にうざ絡みしていたから?

 ……違う、そんなのは単なるきっかけに過ぎない。
 僕は自覚してしまったのだ。
 瀬戸梓紗の事が好きだ、と。

< 22 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop