冷たい雨
回想─夏休み─
 一学期の終業式も無事に終わり夏休みが始まるものの、夏休み前半である七月中の午前中は、ほぼ毎日補習で登校しなければならない。
 僕達が生まれる前から、地球温暖化や太陽フレアの影響による異常気象で夏が過ごしにくくなったと親世代の人達が言うけれど、昔の夏は、本当に夏はここまで暑くなかったのだろうか。
 その当時の経験は流石に出来ないけれど、気象の変化のデータを調べてみたくなる。

 僕は毎日自転車で通学しているけれど、半袖のシャツから出ている腕は、通学だけでじりじりと日焼けしている。
 日焼けする事自体は別にどうも思わないけれど、自転車のハンドルを握った状態で動かせないままジリジリと焼けて行くのだから、紫外線量の強い日なんて結構腕がヒリヒリする事もある。しかも腕はシャツを着ている部分は白いままなのだから、どうせなら上半身丸ごと日焼けする方がいいのにとさえ思ってしまう。
 かと言って上半身裸のままで自転車に乗ろうものなら公衆わいせつ罪で捕まってしまうのがオチだ。考えあぐねた結果、午後から自宅の日なたで上半身裸になって日光浴をするのが無難だろう。

 がしかし、そんな事は出来る筈がない。僕の自宅は酒屋を営んでおり、夏休み期間中は家業の手伝いをさせられている。
 午前中は補習で学校に、帰宅してから昼食を摂り、午後から自宅で課題に取り掛かると夕方から夜にかけて、店の手伝いをしているのだ。
 日中は夏休み期間限定で来てくれる大学生のバイトさんがいるので、その人が帰ってから僕が店の手伝いをする事になっている。

 大概は店の中で商品の陳列をしたり『前出し』と呼ばれる売れた商品の奥にある商品を取りやすく前に出す事がメインだけど、『期限チェック』も大事な仕事だ。
 商品を補充する際、期限を確認しながら古い物を手前に、新しい物を奥に陳列する。その際、消費期限や賞味期限の近い物はかごの中に仕分けする。期限が近い商品は、『見切り』と呼ばれる割引シールを張り、レジ近くに陳列する。
 これはお酒だけに限らず、一緒に取り扱いをしているおつまみもだ。
 お客様の目に触れる場所に置く事で、購買意欲を誘うのだと言う。

 日中に大学生のバイトさんがきちんとしてくれていると、夕方から手伝いに入る僕も幾分か楽なのだけど、バイトさんには配達の仕事もあるだけに、こればかりは何とも言えない。
 本当ならバイトさんは夜の時間も入りたいみたいだけど、両親はバイトは日中だけしか雇わない。

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