ほろ苦彼氏の甘い口づけ
「赤い箱のがコーヒー味で、緑の箱がナッツ入り」

「俺の好きなものばかりだ。ありがとう」

「いえいえ。いつもお世話になってますから。最後は……」



頬を緩ませる司の目の前に黒い箱を置いた。

先ほど紹介した2つと同じ大きさだが、重厚感ある色のせいか、全お菓子の中で妙な存在感を放っている。



「なんか高そうだな。何が入ってるの?」

「ふふふ。ちょっと奮発して、お酒入りのを買ってみました!」



蓋を開けると、瓶の形をしたチョコレートが10個。

10代でもお酒の味を楽しむことができる、ウイスキーボンボンだ。



「今年20歳でお酒解禁するでしょ? 一足先にどんな味か知っておきたいなと思って。食べたことある?」

「いや、ないな。親が市販のやつをたまに買ってきてたけど、子供には早いって禁止されてたから。美羽は?」

「ない。司と同じで食べさせてもらえなかった。だからドキドキしてる」



未知の味に心臓が高鳴っている。


……というのも嘘じゃないけど、実はこのチョコを選んだのには、もう1つ理由がある。
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