マリアちゃんと鬼ごっこ
〈始〉 封鎖された町
とある県にあるN原市。今日もそこにある平岡中学校二年B組では騒がしい声が響いていた。
「ねえ、やっぱり〝アレ〟ってただの作り話じゃないらしいよ」
クラスメイトたちは連日同じ話を繰り返している。授業の時にはなんにも関心がないような顔をしているのに、こういう噂話だけは大好物だ。
……なにがそんなに面白いのか。
盛り上がってる人たちを横目に頬杖をついていると「おはよう、永人!」と、肩を叩かれた。
村瀬永人こと、俺に声をかけてきたのは青山三花だった。
真面目で成績優秀な彼女はガリ勉というわけではなく、性格も社交的で明るい。
女子の平均より少し低い身長なので本人的にはバランスが悪い体型がコンプレックスだと悩んでいるらしいけど、俺から見れば健康的だし、顔も普通に可愛い部類に入ると勝手に思っている。
そんな三花は数少ない女友達のひとりだ。
ほとんど学校では寝て過ごすことが多いほど無気力な俺に、いつも寄ってきては話しかけてくれる存在でもある。
「相変わらず眠そうな顔してるね」
「んー、だって春だし?」
「それって関係ある?」
「あるだろ」
教室の窓から見える校庭では桜並木が風に吹かれて揺れている。
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