マリアちゃんと鬼ごっこ


「な、なにしてんだよ。ビックリするだろ」

扉を開けると矢野の他に浜口静香と井上麻理香もいた。

「驚かせてごめんね。移動してた途中で雨に降られちゃって……」

そう言って矢野は制服についた雨粒をハンカチで払っていた。

たしかに三人の体が少しだけ濡れている。空を見ると、ぱらぱらとにわか雨のようなものが降っていた。

詳しく話を聞くと、どうやら三人は区役所の近くにある交番で一晩を過ごしたらしい。……てっきりマリアが来たのかと思って、かなり身構えてしまった。

「こっちの電話線ってどうなってる?」 

「全滅」

「……そっか。交番もダメだったよ」

矢野のように学級委員になるほど真面目じゃないけど、俺たちの思考はよく似てる。矢野も逃げることよりまず外部と連絡を取ることを優先的に考えて交番に身を寄せたのだと思う。

「あ、食べ物がある! 私、昨日からなにも食べてなくてお腹ペコペコだったんだ」

「私も!」

浜口と井上が売店に気づいて中に入っていた。カゴを使わずに手たり次第に棚から取ってはその場で袋を開けて食べている。

「村瀬くんは青山さんとふたり?」

「いや、凛太郎もいるよ」

こんなに騒がしくしてるのに、凛太郎はまだ寝ていた。これは嫌味でもなんでもなくて、本当に幸せなやつだなって思う。

「ねえ、矢野さん。私たちこの町から出てみようと思ってるんだけど……」

三花は昨日話していたことを矢野に伝えていた。

「え、でもそれって失格になるんでしょ? 大丈夫なの?」

「わかんないけど、試してみる価値はあるような気がしてる」

そう答えたのは俺だった。

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