マリアちゃんと鬼ごっこ


その怒りを静めるために食品売り場へと歩き出す。その後を追うように三花と凛太郎がついてきた。静かなフロアではまだ牧田たちの笑い声が響き渡っている。

「あいつら絶対に普通じゃない……」

俺は息を吐くように呟いた。その瞬間、脳裏にマリアの言葉がよぎった。

――『普通ってなに? じゃあ、きみは自分のことを普通だって思ってるの?』

俺が……普通じゃない?

そもそも普通ってなんだ? 

「永人の思考が正しいよ。欠陥があるのはあの人たち。永人は永人が思ったとおりに行動すればいいんだよ」

「……三花」

たしかにそうだ。極限の状況の中で自分の考えを見失いそうになるけど、自分が正しいと思ったことをすればいい。そしたら必ず光が見えてくるはずだ。

「ありがとう。なんか俺お前に助けてもらってばっかりだな」

「それは私のほうだよ」

じんわりと芽生えて始めている三花への想い。けれど、以前吊り橋効果という単語を聞いたことがある。

吊り橋を渡っている時の胸の高鳴りが、目の前にいる異性に対してのものだと勘違いすることがあるそうだ。

恐怖や不安を一緒に体験した人に恋愛感情を持ちやすくなるのは事実だと思う。

こんな緊張状態が続けば尚更にそうだ。

でも俺は三花に抱いている気持ちを勘違いだと思いたくない。

だからこそこんな鬼ごっこはすぐにでも終わらせて、また穏やかな日常に帰りたい。

そしたら下手くそな言葉でもいいから、この想いを全部三花に伝えよう。

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