マリアちゃんと鬼ごっこ
……放送を聞いて避難した?
いや、それだったらもっと学校中が大騒ぎになっているはずだ。
おそらくB組以外の生徒は最初から登校すらしていない。そう考えたほうがしっくりくる。
「た、体育館も見に行ったけど誰もいないよ。どうなってるの……?」
矢野の言葉にみんなが黙った。するとわざと瀧川が椅子を強く引いた。そのまま座っていた腰を上げてカバンを手に帰る準備をはじめている。
「誰もいねーのに学校にいても意味ないから遊びに行こうぜ!」
「お、賛成、賛成!」
瀧川に同意したのは、いつも一緒につるんでいる高橋純也と有野弘だった。
「待ってよ! なんでそんなに落ち着いていられるの? さっきの放送を聞いたでしょう? 殺人鬼が脱走したって……」
「ぷ、はは。それまじで信じてんの? 勉強しすぎて頭おかしくなったんじゃね?」
瀧川が矢野をからかうと、周りもゲラゲラと笑っていた。このクラスには目に見えて権力の差がある。だからこのクラスはどうも好きになれない。
「永人、俺らはどうする?」
凛太郎に問われて俺は考えるように黙った。
仮に放送がイタズラだったとしても、他の生徒が登校してきていない理由には繋がらない。それにやっぱり町が静かすぎるのが気になる。
もしかして、すでに俺たちしかいないとか?
想像しただけでゾッとした。
……と、次の瞬間。
みんなのスマホがバイブ音をたてて一斉に鳴り響いた。
うちの学校は登下校の連絡手段としてスマホを持ってきてもいいことになっている。
なんだかものすごく嫌な予感がして、俺は届いたメッセージを開いた。