【短編】桜咲く、恋歌にのせて
あれ?
何だかその言い方……。
「鳴かぬなら鳴かせてみせようホトトギス、結依も知ってるだろ?」
「うん、知ってる」
何となく、ヒデの言いたいことが見えてきたかも。
「鳴かないホトトギスをどうやって鳴かせるか、戦国武将の三人の性格を歌った川柳だけど……」
短気で一番戦国の世の武将らしい信長は、
“鳴かぬなら殺してしまえホトトギス”
知性溢れる猿と言われた秀吉は、
“鳴かぬなら鳴かせてみせようホトトギス”
穏やかで気の長い家康は、
“鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス”
髪が、ハラハラと落ちてゆく。
ヒデの指がそのまま首を這うと、ある場所でその動きを止めた。
「結依を好きになった時には既に彼氏がいたし、人の恋路を邪魔するぐらいなら気持ち消し去ろうとした」
ジリジリと近づくヒデ。
一度足りとも視線を外さない。
「それでも諦めきれなかったから、ただ結依のことを想っているだけでいい。そう思ったんだ」
今にもキスできそうなぐらいの至近距離。
体は既に密着していて、胸が激しく鳴り響く。
「それなのにな。結依ってば彼氏と会うっていうのに、あの笑顔を見せなくなったんだから」
「えっ?」