都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「なんなら明日ご両親に挨拶行ってもいい」


突然キリッとした顔で宣言した佐久間。
嬉しいけどそれはやめてほしい。


「そんなことしたらウチの父親のぎっくり腰再発するんでやめてください」

「そうだった」


思い出すように笑って「じゃあそれまでに博多弁覚えねーと」なんて言うからかわいくて仕方ない。
すると佐久間は表情を変えて、緊張した様子で手を握ってきた。


「俺と結婚を前提に付き合って」

「っ……」


そう来たか、こっちは告白は終わったと思ってたから不意打ちを食らった気分。


「なんで照れんの?こっちが恥ずかしくなるからやめろよ」


少し恥ずかしがりながら、佐久間は手を広げて指を絡ませてくる。


「幸せにする」

「よくもそんなセリフを……」

「でもたぶん、仁奈以外にはこんな言葉一生言わない」

「たぶん、なんだ」

「違う違う、絶対使わない」


ボソッと呟いたら慌てて訂正された。
それにしてもさっきから佐久間の発言、糖度が高すぎてどうにかなりそう。


「で、肝心の答えは?」

「よろしく、お願いします……」

「よかった、耳まで真っ赤だから断るわけないと思ったけど」


かと思えば揚げ足を取るようにニタリと笑う。
いつもなら腹が立つけど、誘惑するような甘さに比べたらこっちの方がよっぽどいい。

佐久間の満足気な顔を見て、私もやっと素直になって心から笑い返した。
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