都合のいい女になるはずが溺愛されてます
まだ慣れない。佐久間がそうやって素直に気持ちを伝えてくれること。
永遠なんてないのに、佐久間とはずっと一緒にいたいって思ってしまう。

信頼していいはずの甘い言葉にチクリと胸が痛むのは、いまだに不安と心配が隠しきれない証拠だ。


「てか、マジで楽しかったから申し訳なさそうにしないでいいよ」


感情が顔に出てたのか、佐久間は私の頭を優しく撫でる。


「類くんとはフツーに友達になりたい。あの子おもしれーわ。
麗くんは仁奈に似てるね。警戒心強くてどこか壁作ってる感じ」

「そう？」

「うん、だから次の目標は麗くんと仲良くなること」


ちっぽけな不安を吹き飛ばすような清々しい笑顔に自然と頬がゆるむ。
すると佐久間はふと口の端を上げて悪い顔をした。


「あー、けど一個だけ文句言わせてもらうとしたら、出張から帰ってきてお預けなのはキツいわ」


お預け、とは夜の営みのこと言ってる？
佐久間の顔からしてそれしか考えられない。


「こういう時同棲してたらいいなって思う。
ねえ、仕事終わりに飲みに行くって言って俺ん家来れない？」

「あの子たち勘がいいからバレそうで怖いです」

「はは、ウソウソ。我慢するからハグして」


申し訳ないけど断ったら、佐久間は腕を広げてそこに私を迎え入れる。
1週間ぶりのハグ。正直嬉しくて佐久間の背中に手を回した。


「おやすみ、仁奈。また今度ふたりっきりで会おう？」

「……うん、おやすみ」


そっと囁いて身体を離し、背を向けた佐久間の後ろ姿を見えなくなるまで見つめていた。
この瞬間が名残惜しくて、それでいて幸せだった。
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