都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「最低!」


バチン、いい音がして女性の怒りに満ちた声が廊下に響き渡る。

開けたままの会議室から聞こえたその音。立ち止まったら声の主と思われる女性が出てきた。
彼女はハイヒールを大きく響かせて顔を真っ赤にしながら出ていった。

あれ、もしかしてうちの会社の受付嬢?
他の部署でも美人と話題の彼女にあんな顔させるなんて、相手はいったい誰だろう。

ちょうどその会議室に用事があったので遠慮なく室内に入った。
両手に抱えた荷物をドサッと置いて辺りを見回す。

すると演台の近くでひとりの男性が頬を押さえてこっちを見ていた。

やっぱりあの音ビンタだったか。
痛かっただろうな……とは思うけど同情はしない。


この男、営業部の佐久間 陸(さくま りく)は顔はいいがとびっきりのクズだと話題だから。

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