都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「陸、来週の土曜空いてる?」


夏、外出する気力もなくて家で涼んでいたら仁奈が麦茶を差し出しながら首を傾げた。
はいはい、来週の土曜は花火大会だもんな。


「あー、ごめん。その日仕事でさ」

「そっかぁ……」


もちろん空いてるけどいじけた顔が見たくて意地悪してしまう。


「なーんて、嘘に決まってんじゃん!
来週の花火大会一緒に行きたいって?いいよ」

「は……?なんで嘘つくんですか!」

「ごめんね〜性格悪くて」

「もう陸と花火大会行かない」

「やだ、仁奈の浴衣姿見たい」


いじけた仁奈は唇をとがらす。
出た、これが見たかったんだよ。かわいい〜。

仁奈は不満を感じたり嘘をついたりする時に唇をとがらすクセがある。
あんまりにかわいいから狙ってんの?って最初は思ってたけどうやら無意識らしい。


「浴衣も着ません」

「実家から浴衣送ってもらったのに?」

「え……なんで知ってるの?」

「だって俺、仁奈の母さんと仲良いから」

「お母さん!秘密って言ったのに……」


全部お見通しだとバレて仁奈は顔を赤くする。
それからキッと睨んできたけど俺には逆効果だって知らねーの?

いじめたいって気持ちを加速させるから無駄だっての。
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