都合のいい女になるはずが溺愛されてます
ものすごく矛盾しているって自分では分かってる。
佐久間のこと気になって仕方ないのに、佐久間を好きになりたくないって思ってる。

絶対好きになっちゃいけないタイプの代表なのになぁ。

かと言って告白したら玉砕するのは目に見えてる。佐久間がそういう関係を望んでいないことも。

あいつが欲しいのは後腐れしないお利口な女。
でもそんな人間、いるはずないのにね。


「……ああ、やだ。また考えてる」


最近、心まで佐久間に侵食されてほんと参ってる。
案外私ってチョロいのでは?

気を紛らわすためにテレビをつけて情報番組を見る。
すると佐久間が髪を拭きながらパンイチで部屋に入ってきた。


「昨日録画した映画一緒に見よ」

「佐久間さんはその前にちゃんと服を着てください」

「いいじゃん仁奈の言った通りパンツ履いたから」


自分勝手なのにどこか憎めなくてずるい。
それに距離を置こうと作った壁を簡単に超えてくるから勘弁してほしい。

結局佐久間は服を着ずに映画を見始めて、それからなんだかんだ夜遅くまで私の家にいた。
佐久間がいなくなった部屋はひどく静かで寂しかった。
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