ペルソナ





○○県○○市のとある警察署。
今まで交番勤務が主だった一颯にとって、警察署内で働くのは憧れだった。
だが、今は辞令を貰い、直属の上司と共に念願の捜査一課に来た。
憧れよりも緊張が勝っている。





「そう緊張することはない。一課に配属が決まったと言っても君はまだぴよっこだ。皆フォローはしてくれる……はずだ」





隣でそう声をかけるのは一課の課長、司馬徹平(しば てっぺい)
穏和に見えるが、切れ者揃いの捜査一課の課長をしている人だ。
司馬も相当頭が切れる人物に違いない。
……ただ、一颯からしてみれば最後の《はず》は余計だった。
そんな言い方をされてはミスをしてはいけないのだが、してしまった時が恐ろしい。






「心臓が口から出そうです……」






「大丈夫だ。君には目指すものがある。目指すものがあるのは君にとって強みだ。自信を持ちなさい」






そうだ、俺は刑事になるんだ。
《キョウさん》と呼ばれていたあの人みたいに誰かを守る強い刑事に。
目指すものがあるのは強み。
司馬の言葉に、不思議と感じていた緊張が軽くなった。





「ありがとうございます」





「さて、そろそろ行こうか。皆、君を待っている」






一颯は司馬に促され、捜査一課のフロアへと踏み込んだ。
そして、気圧された。
交番の頃とは違ったピリピリとした空気。
切れ者揃い――。
それは決して間違っていないことを物語る雰囲気だった。






「皆聞いてくれ。今日から一課に異動してきた浅川一颯君だ」






「浅川一颯と申します!念願の捜査一課に配属が決まり、嬉しく思います。ふつつか者ですが、ご指導ご鞭撻宜しくお願い致します」






深々と頭を下げる一颯に、捜査一課の面々の拍手が聞こえた。
とりあえずは歓迎してくれているようだ。
一颯はそれが嬉しく、顔がにやけるのをどうにか押さえ込む。
こんな顔を見られては弛んでると思われ兼ねない。





「君のデスクはあそこね」





司馬が指差す方には一颯と比較的歳が近い男達がいた。
緊張しつつもデスクの方へ向かい、男達に頭を下げる。








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