ペルソナ



「っ!?」





ガバリと起き上がれば、身体のあちこちが傷んだ。
一颯は痛みに顔をしかめつつ、辺りを見渡す。
鼻を突く消毒液の匂いと腕に繋がれた管に、包帯が巻かれた指先。
清潔感のある白に囲まれた室内。
気持ちが落ち着いて冷静になれば、ようやくそこが病院のベッドの上だと気付く。






「夢か……」





一颯はもう一度ベッドに倒れると、深く息を吐く。
夢というにはリアルすぎた。
拳銃を握る感触も頭を撃ち抜かれる感覚も。
汐里に触れ、脈が無かった感覚も。
そこで一颯はハッとする。





「京さん!」





再びガバッと起き上がってベッドから降りようとしたら、丁度病室のドアが開いた。
そこには赤星と椎名、椎名に押されて車イスに乗った汐里がいた。
頭に包帯を巻いているものの、汐里は元気そうに見える。





「浅川、目が覚めたのか。体調とか悪くな――って、おい!?」





赤星が一颯にそう声をかけるとほぼ同時に、一颯はベッドから転げ落ちる。
慌てて赤星が駆け寄り、抱き起こした。
汐里と椎名も驚きながら彼に近付く。
すると、一颯は躊躇いがちに汐里の手に触れる。





「暖かい……夢じゃない……生きてる……」





一颯の目からボロボロと涙が溢れる。
汐里達は急に泣き出した一颯にぎょっとするが、すぐに状況を理解する。
恐らく、一颯は汐里が死ぬ夢を見たのだろう、と。
汐里は一颯の頭に手を伸ばすと、そっと撫でる。






「勝手に殺すな。私は生きてる」






言葉は素っ気ないが、声音は優しい。
一颯は優しく頭を撫でる汐里の言葉に頷きながら涙を拭う。
赤星も一颯の背中を優しく撫でてやり、椎名は「頑張ったな」と声をかけてやる。






「落ち着いたか?床はあれだからとりあえず、ベッドの上に戻れ」






少しして落ち着きを取り戻した一颯は頷くと
、赤星に促されてベッドの上に戻る。






「で、何から話す?」






聞きたいことはたくさんある。
汐里の怪我の様子、神室の行方、監禁後どうなったか、司馬のこと。
一颯は何から聞けば良いか悩んでいると、椎名が気をきかせて順番に話してくれた。






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