幸福音
あの日から1週間が経った。

日が沈みかけている。

空がオレンジ色に染まって、今頃、ホームルームが終わったんだろうな。

と、そんなことを考えながら、学校の校門に寄りかかっている。


今の俺は制服じゃなくて、黒いコートを羽織っている。

ストリートピアノで演奏するときの定番の格好。

陰キャと呼ばれ続けていた俺にはふさわしくない格好。

それこそ、椎名が言っていた“陽キャ”に見えるんだろうな。


そんなことを考えながら、校門のところで時間をつぶしていると。

ホームルームを終えた生徒たちが校舎から出てくるのが目に入った。

俺は姿勢をなおして、人探しを始める。


……椎名。

椎名はどこだ。


校門前で椎名を探す俺はすごく怪しい奴に見えるだろう。

女子生徒がきゃぁきゃぁ言っているのが聞こえる。


怪しい奴だと思われても今はいい。

俺は椎名を待っているんだから。


しばらく待っていると、1人のギャルが校舎から出てきたのが見えた。


あの金髪は椎名だ。


俺は椎名のもとに駆け寄る。
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