きみはカラフル




はじめて聞いた直江さんの身の上話に、事情は異なれども同じく母親との離別を経験しているわたしは、同調するものがあった。
けれどそれを直江さんに伝えるよりも先に、直江さんが次の言葉を告げたのである。

「それよりも、もう誤解は解けたよね?あれは彼女じゃないって、信じてくれた?」

「もちろんです。直江さんがそんな嘘言うはずありませんし……」

すると直江さんの()は、黄色がひとまわり大きくなった。
楽しいとか嬉しい……そんな具合だ。
けれど直江さんの言葉はそれで終わらなかった。
続けて、


「それならよかった。好きな人に、彼女がいるなんて誤解はされたくないからね」

さらりと、本当にさらりと、そんなことを言ったのだ。
首もとに並んでる色達(・・)にも、何も変化は起きていない。
だからこれは、本当にごく自然とこぼれたものだろう。

「え……?」

問い返したわたしに、直江さんは柔和な笑顔のままにもう一度告げる。


「俺は、雪村さんが好きなんだ。だから、誤解が解けてよかったよ」

それは、わたしが知る中で最もナチュラルな告白だった。
そしてわたし達の関係が前に進むための、きっかけのセリフになったことに間違いはないだろう。

ついさっきまでの憂いが、一瞬にして吹き飛んでしまった。
その代わりに胸に宿った驚きは、”嬉しい” という感情を見失ってしまうほどに、わたしに、ただただどうしようもなく直江さんを凝視させた。










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