きみはカラフル




付き合っていくうちに、わたしは、弘也さんの意外な一面を知っていった。
まず、思ってた以上に甘々なタイプだったということ。
というのも、会うと必ずといっていいほどわたしの写真を撮っていたからだ。
弘也さん曰く、好きな人の写真は何枚あっても足りない……らしい。
それから、心配性で、過保護。そしてヤキモチ焼き、時々、束縛しがち。
でも、恋人ができると誰だって大なり小なりそういう類の言動はあると思うし、弘也さんのそれも、決して不快なものでもなく、むしろ束縛すら喜んでるわたしがいたのだから。

毎日、可能な限り、勤務先の店と自宅の送り迎えをしてくれて、休日の買い出しにも車を出してくれたり荷物持ちを買って出てくれたり。
それは見ようによっては献身的で、わたしにそこまでしてくれなくても…という戸惑いも生じさせたけれど、わたしと弘也さんを知る店のスタッフからは「溺愛されてるわねえ」「そこまで愛されて、羨ましい…」なんて言われるものだから、わたしも、すっかり弘也さんの愛情に浸らせてもらっていた。


ただ一度だけ、友達との旅行を反対された時は、ちょっとした口論に発展したこともあった。
けれど、それも無闇に止めたわけではなく、天気の崩れからくる交通状況の悪化を心配してのことだと後で知り、すぐに仲直りしたのだ。
季節外れの大雪はニュースでも大々的に取り扱われ、キャンセルしてよかったねと、一緒に行く予定だった友人と胸を撫で下ろす結果となった。


そういう恋人としての時間を積み重ねていくうちに、わたしは、弘也さんの穏やかでありながらも熱を孕んだ深い愛情に触れて、こういう人だから、カラフルな()を持っているのだなと確信していた。


やがて一年が過ぎる頃には、弘也さんから同棲を提案された。


「遠くない先に、それらしい(・・・・・)ことは言うつもりだけど、まず、一緒に住んでみない?」

プロポーズの予告まがいのことを言われて、喜ばないはずがない。
わたしは何度も何度も、大きく頷いていた。即答だった。










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