きみはカラフル




そして一緒に暮らしはじめると、弘也さんのヤキモチ焼きや過保護っぷりにも波があることが分かった。
わたし一人での外出を心配してついてくるときもあれば、行ってらっしゃいと家の玄関で見送ることもあったりで。
わたしの推測では、弘也さんは、自分が疲れてるときに心配性がパワーアップするようだ。
その証拠に、わたしに過保護を炸裂させるとき、必ずと言っていいほど、弘也さんの()は紫が多めだったのだから。

それに気付いてからは、わたしは、なるべく弘也さんの疲れを癒してあげたい…という思いから、弘也さんの言うことを素直に聞くようにしていた。
そうすると、()が少し小さくなったから。
もちろん、弘也さんに心配かけたくないという思いも大きかったのだけど。


そんなある日の夜、仕事を終えた弘也さんが帰宅するなり言ったのだ。

「急だけど、長めの休みって取れないかな?旅行でもいかない?」

その背後に、今までにないほどの大きな紫を携えながら。




思えば、この誘いから、事態が動きはじめていたのかもしれない。

けれど、まだ何も知らなかったわたしには、それは、楽しいバカンスのお誘いにしか聞こえなかったのだ。













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