きみはカラフル




弘也さん発案の旅行は、地方にある広大なリゾート施設になった。
急ではあったが、ちょうどシフト作成のタイミングだったこともあり、有休も含めて一週間の休みを貰えることになったのだ。
シフトに融通の利くわたしと違い、弘也さんの仕事が気になったけれど、どうやら代休もかなりたまっていたようで、そちらもスムーズな休暇取得となったようだ。
そうして、わたし達は、季節外れの夏休みに突入したのだった。


グランピングに大自然を利用したレジャー、屋内プールやスパ、乗馬体験やその他複数のスポーツ施設にショッピングモール……一週間もあるのに、それらは全て堪能できないほどの規模だった。
ハイシーズンを過ぎてることからあまり混雑もしていなくて、わたしが()に酔うこともなかった。
宿泊は敷地内にあるホテルのセミスイート。
一週間の滞在になるので広めの部屋を取ったのだと、弘也さんは「贅沢だけど、たまにはいいよね?」と甘えるように言った。

案内されたのは、リビングルームとベッドルームがそれぞれ独立していてパウダールームが二つもある部屋で、わたしはこれのどこがセミスイートなんだと驚き、そのラグジュアリー感に慣れなかったけれど、二日ほど過ごすと、それが快適に感じるようになっていった。
慣れとはすごいものだなと、何となくそんなことを思う傍らでは、なかなか慣れないことにも遭遇していた。
というのも、ここに来てから、弘也さんが携帯電話をやけに意識しているのだ。
気がつけばスマホでわたしの…時には二人の写真を撮影するのはいつものことだが、それ以外にも、一日に何度も着信があったり、その都度、弘也さんがバルコニーに移動して通話したり…そんな、姿を見ていると、もしかしたら仕事で何かイレギュラーでも起こったのかなと心配になった。
なぜなら、弘也さんの()が、ずっと大きいまま、何なら徐々に肥大化してるように見えたからだ。







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