きみはカラフル




その日の夜、わたしが仕事から帰っても、家に弘也さんの姿はなかった。
家には弘也さんが一旦戻ってきた形跡もなく、メールも電話も何一つ連絡がない。
夕方の休憩のときにわたしからメッセージを送ってみたが、それにも返信はなく、こんなにも長い時間連絡が取れないことに、一抹ではない不安に胸を締め上げられていた。

けれどわたしが帰ってから十分ほど経ったとき、やっと弘也さんからの着信があったのだ。


「はいっ、もしもし、弘也さん?大丈夫?」

心配のあまり早口でしゃべるわたしに、電話越しの弘也さんの声は沈んでいた。

《……加恵、もう帰ってる?》

「うん、さっき家に着いたところ。弘也さんは今どこなの?》

《それが、………病院なんだ》

「病院?!弘也さん、どこか悪いの?」

思ってもいない返事に、わたしはつい大声で訊き返してしまった。

《いや、俺じゃなくて……姉が、ちょっと体調崩したんだよ。すぐに入院になって、それで一緒にいた俺が付き添ってるんだ》

「お姉さんが?入院だなんて、そんなにひどいの?」

ひとまず弘也さんの無事は確認できたものの、以前からお身体が丈夫ではないと聞いていたお姉さんの容態が気がかりだ。
スマホを握る手のひらに、グッと力がこもる。








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