きみはカラフル




「……ううん。ううん、なんでもないよ」

そう答えて、わたしは、虹色(・・)から目を逸らした。

「そう?それならいいけど……。それより、お腹は空かない?何なら食べられそう?」

優しい弘也さんはそれ以上の追及はせず、わたしの体調を気遣ってくれる。
ちょうどお腹が減ったなとは思っていたのだ。
だが、朝の吐き気を思い出し、「まだしっかりした食事は避けておいた方がいいかな……」と控えめの返事になった。

「軽い食事か……。前に加恵が風邪ひいたときに食べられたのは、おかゆ、アイス、フルーツジュース、ヨーグルト……」

指折り数える弘也さんに、わたしはベッドから下りながら答えた。

「アイスがいいかな。さっぱりしそうだから」

「そうだね、アイスなら糖分もとれるし。……あ、でも今切らしてたんじゃないかな。ちょっとコンビニまで行ってくるよ」

どこまでも優しい弘也さん。
わたしは、嬉しいのはもちろんだけど、そんな優しい恋人に ”好き” という感情があふれてあふれて、もうとにかく、弘也さんが大好きだと、心の奥底のずっと深い芯の方から感じていた。
だから、

「待って、わたしも一緒に行きたい!」

本能で、そう言っていた。
この大好きな恋人と、離れていたくないと咄嗟に思ってしまったのだ。

「………寝てなくて平気?」

元気な声での発言が意外だったのか、弘也さんはかすかな戸惑いを見せたけれど、わたしの「もうじゅうぶん寝たから平気平気」という押し切りに倒されて、二人して散歩がてらのコンビニデートが決まったのだった。











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