きみはカラフル
「お仕事は今日中に終わりそう?」
「うん。必要なメールはもう全部送り終えたからね」
コンビニで目当てのカップアイスと弘也さんの昼食を買ったわたし達は、のんびりと歩きながら帰っていた。
朝の気分の悪さが嘘のように清々しい気分だったわたしは、少しの遠回りを提案してみたのだ。
あまり車とか人通りがない道ならいいよ、弘也さんはそんな条件で了承してくれた。
きっとその条件は、わたしが色酔いしてしまわないようにとの配慮だろう。
言葉のいちいちちょっとした点がこんなにもわたし想いである弘也さんに、わたしもいちいち感動してしまう。
「でも、加恵の体調が酷くならなくて安心したよ」
「弘也さんは心配性だからね」
「そう思うなら、あんまり無理はしないでほしいよ」
「わたし、そんなに無理してないと思うけど……」
「加恵。約束して。俺がいなくても無理したり頑張り過ぎたりしないって」
優しく窘めてくる弘也さんに、わたしは「わかりました。善処します」と、おどけて返事をした。
「絶対だからね。約束したからね?」
何てことはない会話を、二人で楽しみながら、二人の家に帰っていく。
幸せだな…と感じずにはいられなかった。
そして人気のなかった細い道から大通りに出て信号待ちをしていたときだ、わたし達の目の前を、ベビーカーを押す女性が通り過ぎていった。
ひとつ向こうのブロックには大きめの公園もあるので、小さな子供連れを見かけるのは珍しくもないけれど、わたしも弘也さんも、反射的にそのお母さんを目で追ってしまった。
そのベビーカーから、何かが転がり落ちていったからだ。
わたし達の目の前に落ちたそれは、ハンドタオルだった。
いち早くそれを拾ったのは弘也さんで、それを見るなり、なぜだか微笑んだ。