今さら本物の聖女といわれてももう遅い!妹に全てを奪われたので、隣国で自由に生きます
なんだか拍子抜けしてくる。本当に私は、こんなののどこが良かったのだろう。優しくされれば、いや、人として接してくれれば誰でもよかったのだろうけれど。しかしよりによって殿下はないだろう。なんでこんなのをすきになったのか。我ながら自分がわからない。

もちろん、だが。

これは殿下を試しているだけである。たとえ彼が飴を舐めたとしても許すつもりなんて微塵もない。

私は殿下をじっとみる。殿下は息を飲んで飴玉を見ていたが───やがて、その手を振りかざした。

「ふざけたことを言うな!!誰がこんな………っ!こんなものを食べるか!おい、衛兵!!この女をひっ捕らえろ!もう限界だ!!牢屋にぶち込んでやる!!」

バシッと、振り払われた袋が地面に落ちる。コロコロと飴玉がいくつも転がっていった。中には割れてしまったのもある。それを見て、私はため息をついた。

「あら………。残念ですわ、殿下。これが最後のチャンスでしたのに。相変わらず頭の足りない方」

「なんだと……………!?」

「残念。時間切れです」

遠くで国王陛下が慌てたようにこちらに向かってくるのが見えた。そして、衛兵もまた殿下に言われた言葉に戸惑いながらもこちらに向かってきている。私はそれを見ながら、小さく呪文を唱えた。

爆発(バーニング)

予め組んであった術式に魔力を流せば、すぐにそれは起きた。あちこちで爆発が起き始めたのだ。城中で爆破があちこちと起こり、悲鳴が起きる。爆発と言うよりももはや爆破の域に近いかもしれない。その衝撃は強く、足元の地面すらもを揺らがした。ミレーヌが悲鳴をあげた。

「きゃああ!」

「な、なんだ………!?」
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