今さら本物の聖女といわれてももう遅い!妹に全てを奪われたので、隣国で自由に生きます
ミレーヌが王太子に抱きつき、王太子は慌てたように周りを見る。私はそれを見ながら、踵を返した。王太子が叫ぶが、しかし今はそれどころではないだろう。早いところなんとかしないとあっという間に城は廃屋と化すだろう。それほどまでにこの魔法の威力は強い。

私はふと足を止めた。そして未だにこちらを向いて固まっている殿下を振り向くと、今までで一番の笑顔を彼にみせた。

「ごきげんよう、マクシミリアン殿下。できることならもう二度とそのお顔は拝顔したくはないものです」

そして、続けて言った。私は笑みを乗せて、これ以上ないほどの餞の言葉を彼に送った。いや、彼らに。

「勝手に幸せになってれば?」

王太子としての責務も果たさず、考える脳すらない彼を待っているのは暗澹たる未来だろう。本来の聖女である私を蔑ろにし、勝手に婚約破棄をした。挙句、その聖女が国を出る原因を作った彼はもう王太子としての肩書きを失うかもしれない。

勝手に幸せになればいい。そして、幸せ(バッドエンド)を紡げばいいのだ。お望み通り、ふたりで。

爆発が次々と起こる中、私は思いついたように言葉を付け足した。

「──────」

だけど、タイミング悪く間近で大爆発が起きた。
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