今さら本物の聖女といわれてももう遅い!妹に全てを奪われたので、隣国で自由に生きます
そしてある日、公爵がなんの前触れもなく突然やってきた。ある日、食事をしていた時に突然やってきたのだ。食事、と言っても私のそれは酷いものだった。

その頃は侍女でさえ私を軽んじていて、食事は必要最低限生きていければいいとでもいうような、簡素で質素なものだった。

冷えたスープに硬いパン。恐らく侍女の夜食用であるであろうそれを、毎食出されていた。まだ、母が生きていた時の方が食事はマシだった気がする。いや、母が生きていた時の食事の方がよっぽど良かった。

歳の近い侍女は何かやらかして別宅へと飛ばされてきたらしく、私につけられたことが不満であるようだった。他の侍女も似たり寄ったりな状況らしく、誰一人として私に優しくしてくれる人はいなかった。

そして、その日もまた硬いパンと水に塩をとかしこんだだけの、スープとも呼べない冷たいそれに浸して食べていた時。

父親である公爵がやってきた。そして、私の食事を見ると忌々しそうにしながらもそれを引っくり返したのだ。

『まだ生きていたのか!』

そう言われた時の絶望と、衝撃を、きっと私は生涯忘れないだろう。
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