愛され、溶かされ、壊される
入社
彼は今年度に新入社員として、うちの課に入って来た。
彼を見た殆どが、見とれていた。
あまりにも綺麗で―――――


もちろん、私もその中の一人だ。
「綺麗……」
つい、言ってしまった。
雑音に消えてしまう程の、小さな声だったので、聞かれてないが――――

恥ずかしい………


でも、その小さな私の声を彼は聞き逃していなかったのだ。


この会社は大手企業で、社員も多い。
でも彼・福井くんを知らない社員はいなかった。

「で、福井くんの指導は―――」
「あの、課長!僕が指名していいですか?」
「え?あぁ、いいけど、誰?」
「あそこにいる、可愛い女性社員の方で!」

「え?私…?」
「はい。えーと、濱野さん。よろしくお願いします」
そう言って、握手を求めてきた。
「え?は、はい。よろしくお願いします」
彼の大きな手を握り返した。

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