愛され、溶かされ、壊される
その衝撃的な新年度から、もうすぐ丸一年。

私は福井くんの指導を、必死で務めた。
最初は、かなり大変だった。
やっかみなど日常茶飯事で、無理な仕事を押し付けられたり、わざと失敗させられたり。
サービス残業もいつもだった。

しかも福井くんがその度に守ってくれるので、やっかみは更に酷くなる。
ついには、課長に指導係を代わってほしいとまで懇願した程だ。

それでも福井くんは
「あり得ません。濱野さん以外と仕事なんてしません。
どうしてもと言うなら、濱野さんを連れて仕事辞めます」
とまで言うのだ。
これにはかなりびっくりしたし、少し引いた。

でもこの言葉が、他の女性社員を少し引かせる結果になり、やっかみは治まったのだ。
そして、それは私にもしかしたら福井くんは私のことを好きなのでは――と思わせていた。

でもどうしても告白する勇気がない。
私が浮かれてるだけかもしれない。
私と福井くんがつりあうわけない。

モヤモヤした気持ちを抱えながら、年が明け、新年会を向かえたのだ。
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