愛され、溶かされ、壊される
奉仕
竜くんと付き合って一か月が経った。
もうすぐ、バレンタインだ。
竜くんと、初めての。

「まただ。また失敗……。う…苦い…」
どうして上手くできないのだろう。
料理は人並みにはできるが、お菓子となると途端に上手くできない。
「もう一回作ってみて上手くできなかったら、買いに行こう…」

そう思い、再度作ってみるがやっぱり失敗した。

「やっぱ、買いに行こう…」
行くなら今日じゃないと、間に合わないな。
バレンタインは四日後で平日なので、今日の休みに行っておかないと、買いに行く時間がないだろう。

明日からまた仕事だし、行き帰りは竜くん一緒だし。
よし、行くか!!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「人、多いなぁー」
さすがにバレンタイン前の日曜日。
女性でいっぱいだ。

私は小柄なので、こんなに多い人混みは余計に辛い。
でも、竜くんの為だ!

なんとか良さそうなチョコを見つけ、レジに向かう。
やっとのことで、会計を済ませデパートから出ようとしたところで、竜くんから電話がはいった。

「はい。竜くん?」
『あおちゃん?特に何もないんだけど、何してるかなって!…ってあおちゃん今どこ?』
「あ、今ちょっとお買い物に来てて。それで―――きゃっ――」
『あおちゃん!?大丈夫?』

「ちょっと、そこ邪魔!!」
「あ、ごめんなさい…」

『もしもし!!?あおちゃん!!』
電話中に誰かにぶつかりそうになってしまった。
電話口で竜くんの焦った声が聞こえる。

「あ、竜くん!ごめんね…人混みが凄くて……人にぶつかりそうになっちゃった!」
『どうして、一人でそんなとこに行くの?危ないよ!』
「え、あ、それは………」
バレンタインって、言えない。
「あの、どうしても欲しい服があって!でももう帰るよ!」
『待って!迎えに行く!もう暗いし危ないから!どこの店?』
「え?大丈夫だよ!人いっぱいいるし」
『ダーメ!教えて?どこ?』
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