愛され、溶かされ、壊される
*****三井 side*****
濱野さんのことは、彼女が入社した時から気になっていた。
とびきり美人でも、可愛い訳でもない。
でも控えめな態度や、恥ずかしがり屋で話しかけると、少し顔を赤くしはにかむ笑顔が、密かに俺達男性社員の癒しになっていた。

俺も好きになっていた。
正直いつでも手に入れられると思っていた。この職場では、俺が一番カッコいいと言われてたし、能力にも自信があったから。

でも、アイツ・福井 竜が来てから全て変わった。
アイツは一瞬で女子社員の心をさらい、あろうことか彼女と付き合いだしたのだ。
びっくりした。
おそらくアイツが何もしなくても、向こうから寄ってくるだろうに、真っ直ぐ彼女だけにアプローチし、あっさりさらっていったのだ。

腹が立った。俺が手をこまねいている間に、彼女と付き合ったから。
だから奪ってやろうとしたのだ。

そして、この言葉。
「三井さん。何か勘違いしてるようなので、伝えておきます。葵は俺の女です。間違っても手を出さないで下さい。まぁ、あんたに奪える訳ないけど。
もし少しでも奪うようなことをしたら―――――
マジで殺りますよ」
怖かった。
いつもの福井ではなかった。
口調も話し方も普段とは全くの正反対で、何よりもこの雰囲気。
声をあらげてる訳でもなく、あくまで冷静なの
に、その言葉に言い様のない恐ろしさを感じた。


でも日に日に濱野さんは綺麗に、可愛くなってく。
あの時の福井の恐ろしさを忘れる程に、彼女に夢中になっていた。
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