愛され、溶かされ、壊される
そんな時に課長から言われたこと。
「今日から一週間三井くんのフォローをしてくれ!」

チャンスだと思った。
このチャンスを無駄にしてはいけないと。

だから彼女の心に少しずつ浸透させようと、あんなことをした。
俺の隣で作業している、濱野さん。

俺が作成した書類を確認し、まとめてくれている。
その真剣な横顔があまりにも綺麗で、つい見とれていた。
ふと、彼女の左手に目がいく。
薬指に光る“それ”に言い様のない嫉妬を感じた。

「ねぇこれ。この指輪福井からのプレゼント?」
そう言って、彼女の小さな手を握る。
細い腕。折れそう―――
「あ、あの離して、下さい!」
ヤバ…可愛い…
彼女は顔を赤くし、消えそうな声で言う。
わかってんのか!その声が煽るってこと。

あっ――!
彼女の首筋に赤い小さな内出血を見つけた。
それはきっと―――
「もしかしてこれ、キスマーク?」
その後は無意識だった。彼女の首筋に触れる。

“葵は俺の女です”その言葉がフラッシュバックする。
指輪が、キスマークが、アイツのモノだと主張しているようで、ムカついて―――――。
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