ただ今、2人の王子に愛され中


「隼人くん、これ、いらないからあげる!」


 同級生の女子…竹内(たけうち)優羽(ゆう)からそれをもらったのは、確か3日前のこと。


「え…なんで俺に?」


 優羽が俺に渡してきた…押し付けてきたモノは、映画の前売券だった。

 今話題の、今度公開されるらしいアニメ映画。


「いいからもらっといてよ。あたし、その日に観に行けなくなっちゃったんだ。」

「は?だから、なんで俺に?」

「だって、隼人くん、いつも暇そうじゃん。」


 え、そうなの?

 俺って、周りからそんな風に見られてんの?


「本当は家族にあげようと思ってたんだけど、みんな別の日のチケット取っててさあ。捨てるのももったいないし、隼人くんにあげる!」

「でも俺、アニメとか興味ないんだけど。」

「いいから!観に行く時間くらいあるでしょう?」


 ある。

 観に行く時間は、確かにある。

 前売券に記載されている上映日は、特に何の予定もない日だ。


 でも、だからと言って…。


「じゃ、見たら感想教えてよ~。」


 優羽はそう言うと、とっとと去って行ってしまった。


 そして3日経った今日。

 例のアニメ映画の上映日。


 俺は正直言って、アニメに興味などことさらない。

 というか、そもそも映画に興味がない。


 だが、せっかくここにチケットが1枚ある。

 無駄にしてしまうのはさすがに忍びない。

 俺は、しぶしぶ映画館に向かうことにしたのだった。

< 27 / 29 >

この作品をシェア

pagetop