潔癖女子の憂鬱~隣人は、だらしない男でした~
◆最悪な一日
「……な、なんなのこれ」

両手に持っていたゴミ袋の手に力を込めた結城舞は、信じられないものを見たかのように目をしばたいた。
たしか今日は、燃えるゴミの日のはずだ。
さっき、分別ルールの用紙を熟読したのだから間違いない。
けれど、目の前には明らかに分別されていないゴミが鎮座している。
しかも、ゴミステーションには1袋のみ。
ゴミは収集日の朝に出すのが基本だ。もちろんこの地域も同じルールを採用している。
今は、朝の5時半。
それなら犯人はまだ近くにいるかもしれない、と振り返り、急いであたりを見渡す。

――あれ? いない。

おかしいな、と思いながら首を傾げる。
ある1つの答えに辿り着いた舞は、みるみるうちに顔が険しくなっていく。

――まさか、夜出したとか?

一度ならず二度までも禁忌を侵したのか、と所有者のわからないゴミ袋を睨みつける。


舞は、子供の頃から貯金が趣味だった。
アルバイトをしたお金も、就職後の働いた月給もやりくりして貯金して、ボーナスなんて全額銀行へ預入をしている。
一流企業とはいえ事務職員の給料なんてたかがしれているのに、我ながらよく頑張ったなと思う。

それもこれも自分の城が欲しかったから。

27歳でようやく中古マンションの購入まで漕ぎつけたのに。
マナーが守れない住人が住んでるなんて聞いてない。
購入するとき、くどいくらいに治安やスーパーなどの周辺環境、マンションの住人の傾向を不動産会社に聞いて確かめたはずだった。
まさか、重要事項を伝え忘れたとでも言うのだろうか。

「ほんと、最悪……」

舞は、目の前の分別されていない袋から空き缶だけ取り出し、部屋へ戻った。
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