潔癖女子の憂鬱~隣人は、だらしない男でした~
***

「結城ちゃん、眉間にしわ寄ってるよ〜」

指摘された眉間のしわを右手で伸ばしながら、隣に座った2つ年上の先輩の里崎に目をやる。

「お腹でもすいた?」
「すいてません」

チラリと時計を確認すると、まだ11時だ。
始業してから2時間しか経っていないのに、疲労度は120%。
今朝のゴミ騒動から、どうも調子が悪い。出社直後、トラブルに巻き込まれてフォローをする羽目になったり、自分自身も小さなミスを連発していた。

「でもさぁ〜、怖い顔しながら仕事をしてると捗らなくね?」
「この顔は生まれつきなんです」

子供の頃から可愛げのない子、と言われていた。

愛想はよくないし、曲がったことは大嫌い。自分のペースを崩されるのは、もってのほかで、協調性の欠片もない。

学生時代のあだ名は、マイマジコ。
これは、陰で言われていたのだけれど。

性格を表すかのような、漆黒の髪を黒いゴムで1本に結び、前髪は横に流してピンで止め、髪の乱れ、服装の乱れは皆無。
同じ年代の女の子のように、もう少しオシャレしてもいいのかもしれないけれど、どうも似合う気がしないから、つい無難な新入社員のようなリクルートスーツを着ている。
これも、真面目に見られる所以かもしれない。
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