成瀬くんと秘密の教室で××の特訓を♥
1 成瀬くんは女の子が怖い
「ねぇねぇ、由紀(ゆき)ぃ。今日転校生が来るってーイケメンらしいよ」
「ふぅん、うちは興味ないけど」
「由紀ってば本当女の子とは思えないよね。イケメンに興味もなければ自分のことを関西の人みたいにうちって言うし。服装もパンツスタイルばっかだし、おまけにショートヘアだもん」
「いいじゃん。楽だし」

 あたしはガヤガヤと騒がしい教室の中でぼそりとつぶやく。

「そう! だけどっ!」 

 小さな声だったはずなのに、クラスメイトの愛理はすぐにかみつくように言い返す。

「もう高校生なんだよ? そろそろ女の子らしくしなさいよー」
「うるさいなぁ愛理……いいじゃん。個人の自由」
「けどさー……!」

  何か言いたげの愛理は、昔からの幼なじみだ。だから、うちが長い髪を面倒くさがってるのもとっくに知ってる。元々運動が好きで活発な性格だから、女の子らしい服装なんかに合わないのだ。シンプルに動きにくいし、汚しやすいし、うちにとっていいことなんかない。

(愛理は可愛い物が好きで女の子っぽい服が好きだから、うちの気持ちなんかわからないんだろうけどさ……)

 第一うちは身長もあるし声も低めだから、可愛い格好は似合わないだろうに。下手な男の子よりデカいんだから……はあ。地味にそれはそれでコンプレックスなんだけれど。

 そもそも高校一年の夏休み前に転校してくるイケメンなんか訳ありに決まってる。関わりたくない。

< 1 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop