ロゼリアの黒い鳥


 だからまた、極上の味を味わうために今は二人が噛み締めている幸せを見届けよう。

 ようやく再会した二人が抱き合い、愛を交わしている今、何よりも幸せを感じているだろう。
 ギデオンはもちろんのこと、ロゼリアは壊れた心で悦びを感じているはずだ。

 自分の望むものではなかったとしても。

「君は幸せかい? ロゼリア」

 もしもあのとき、彼女が心を壊してくれと言わなかったら、きっとギデオンが抱き締めたら抱き締め返すことができたのだろう。
 愛しているという言葉に、同じ言葉を返し、微笑み合えたのだろう。

 でもそれはできない。ただ甘受することしかできない。

 それは、ロゼリアが欲を出したから。
 もう意味がないと放棄してしまったから。

 本当、人間の欲というものは、己の身を滅ぼす一番の劇薬だ。



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