ロゼリアの黒い鳥
あぁ、可哀想可哀想。
(あぁ、愚かしい愚かしい)
なんて悲劇だ。
(なんて楽しい喜劇なんだ!)
カイムは二人の間を踊り続ける。
もう他に行くと告げたが、しばらくは様子を見るつもりだ。
二人の行く末をもう少し見ていたい。
果たしてギデオンの言う通り、愛というヤツが二人を繋ぎ続けられるのか。
もしも何かの拍子でそれが崩れて壊れてくれたらさらに楽しい。
いたずらにロゼリアの正気を戻してやるのも面白い。
戻ったとき、彼女は涙を流しながらこんなこと望んでいなかったと嘆くかもしれない。それで二人の間に不和が生まれたら最高じゃないか。
カイムは愉快に笑う。
「これだから人間で遊ぶのを止められない」
生来、悪魔とはそういうものだ。
甘い言葉を吐いて人間を惑わし苦しめ、そこから生まれいずる負の感情を最高の食事とする。何よりも甘美で、咽喉が潤う。
病みつきになる味をとことんまでしゃぶりつくすのだ。