白き髪のガーネット【改訂版】
第1章
【ガーネット7歳】

ここは炎の国。
第三王子クウォン様が住む離宮の中庭。


「ガーネット様!危のうございます!」

「お止め下さいましっ!!」

私が登る高い高い木の下で、お付きの侍女達が血相を変えて叫んでいる。


「だいじょ~ぶ!あと少しだもん!」

私は侍女達を高い木の上から見降ろしニコッと微笑むと、再び上を見て木を登り続けた。
私が目指す先には、不安そうに鳴き続ける子猫。

ついさっき、いつものようにこの中庭に遊びにきたら聞こえたんだ。
鳴き声を頼りに場所を探っていたら……。
なんと、この離宮で一番高い木の上から。
下から見上げると、ちょうど木の真ん中位の枝で子猫が震えながら降りられなくなっていた。

高い高い木の上。
さすがに1番上まで行くのは怖いけど、途中までなら……。と、私は侍女達の目を盗んで木を登り始めたのだ。


……あと少し。

あと、少し……。

次第に近くなる鳴き声。
確か下から見た時はこの辺りだった筈だと見渡すと、枝に生い茂る葉と葉の間に身を潜めるように子猫は居た。
思わずパッと笑顔になる。


「いい子だね。こっちにおいで?」

私は怯えている子猫を安心させるように微笑みながら手を伸ばす。
はやる気持ちを抑えて、すぐに触れたりはしない。
子猫が鼻先に差し出した私の手の匂いをクンクンと嗅ぎ、スリッと指に顔を擦り寄せたのを確認すると、ゆっくり子猫のお腹に手を回して自分の胸にそっと抱き寄せた。

やったぁ~!!
心の中で思わずガッツポーズ。


「もう大丈夫だからね。一緒に下に行こう?」

声をかけると子猫が返事をするように短く「みゃう」と鳴く。その様子と暖かい温もりに子猫が元気だとホッと一安心。

しかし、それも束の間。
ふと我に返った私は、自分の置かれている状況をみてゾッとした。
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