白き髪のガーネット【改訂版】

そんな、ある日ーー。

「私の妻になってくれませんか?ミラ殿」

俺が9歳の時だった。
水の国の第一王子であり、(のち)の水の国の国王となるノクテ様がミラに求婚している現場を目撃してしまったのは……。

炎の国(うちの国)と水の国の関係が上手くいってない事は、当時子供だった俺にも一目瞭然。特に俺の父親である炎の国王が水の国を疎ましく思っている事は、ノクテ様だって分かっていただろう。
……それでもノクテ様は諦めず炎の国に何度も足を運び、友好を高め、二つの国が共に未来を生きる道を目指していた。

俺には、その姿が眩しくて憧れだった。

7歳年上の彼は、背も高くて、顔立ちも整っており、剣術も魔法を使う能力にも優れていて、おまけにとても心優しい……。まさに非の打ち所がない男性。
そんな、同性である自分でさえも好印象しかないノクテ様からの告白。絶対にミラだって嬉しくない筈がないと思った。

ノクテ様ならば、ミラを必ず大切に、幸せにしてくれる。
二人が一緒になる事は間違いなくお似合いで、めでたい事だ。

……けど。
二人が大好きだからこそ、お似合いだからこそ、悔しかった。
今の自分が何を言おうが、どうしようが、きっと覆る事のないこの状況がもどかしかった。

ミラがこの後どう返事するかなんて、決まってるーー。

だから、俺は逃げた。
彼女の口からその現実を聞きたくなくて、俺はこの日からミラを避け続けた。


……
…………しかし。
避け続けても、目を逸らし続けても、時間が止まってくれる訳ではない。

人伝えにミラの縁談が決まった事を聞き、ついに彼女が炎の国を出て行く前夜になった。
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