私の好きな彼は私の親友が好きで
11:15分に待ち合わせているカフェに入って
美月を探すが見当たらない。
キョロキョロすると手を振っている子が居るが・・・
それが美月だと脳が認識するまで暫く時間が掛かった。

美月は胸まであった真直ぐな黒髪をバッサリ切り、
お日様に当たっている髪はかなり明るいブラウンになっていた。
サラサラだった髪はフワフワに変貌していた。

吃驚する位、可愛い雰囲気に戸惑い、口にした言葉が
「なんか 女らしさが益々減ったと言うか・・」だった。
一瞬、美月の顔が泣いているように見えたが、何時もの様な
軽口が帰って来たので安堵した。

それよりもそこに、陽菜ちゃんが居る事に驚いた。
4人で呑むことはあっても3人で外で会うのは初めてだった。
どうも、陽菜ちゃんと美月がランチの約束をしていたが急遽、
美月に用事が出来て行けなくなり、俺がピンチヒッターで呼ばれた
という話だった。

美月がブッキングするなんて珍しいと思い、何の用事か聞こうと
思ったが陽菜ちゃんが居たので言葉を呑み込んだ。
(後で良いか)

店を後にする美月を見ないで陽菜ちゃんと出掛ける事に
浮かれていた・・
その背中を見たら何か気が付いたかもしれないのに・・・
俺はあの日、美月が最後に俺に向けた顔を思い出せない。

陽菜ちゃんは入学当時から可愛く目立つ存在だ。
フワフワした雰囲気で少し天然?な感じに男子の殆どが
友達になりたいと思っていた。
御多分に漏れず俺もそう思っていた。
だからって中高と男子校で過ごした自分に、人気の女子に
話しかけるスキルがある訳もなく、ただ見ていただけ。

そんな俺でも取っている講義が殆ど一緒で、お気に入りの席が近い
美月とは直ぐに仲良くなり、美月が陽菜ちゃんと仲が良いと知った時は
嬉しかったし、一緒に食事に行ったりする4人グループが出来た時は
奇跡だと思った。

仲の良い男友達に、どれほど羨ましがられたか・・
「告らないの?」の話を何時もはぐらかしていた。
折角4人で一緒にワイワイ出来るのにそれを壊して
良いのかと・・
(そうは言ってる癖に、美月には手を出している矛盾)

そんなキャンパスの憧れの陽菜ちゃんとランチが出来る事に
浮かれてしまったのは仕方が無かった。

連れてこられたお店は一軒家で、都会なのに緑が生い茂っていた。
殆どが女性同士、カップルが3組くらいしか居ない空間だった。
「ここ、凄く人気があって中々予約が取れないの」
「そんなお店良く、予約とれたね。」
「うん。頑張って取ったんだよ~だから美月がダメになって
ショック受けた。」
お店に入って彼女が「予約している高遠です。」店の人に告げていた。

通された席は庭が一望出来る 
学生の俺でも解るくらのいい席だった。

「いい席だね」
「うん。凄く大変だったんだ~普通じゃ中々取れない席だよ。」
「陽菜ちゃん、顔広いんだね。」
「ま、友達は結構多い方なのかもね」
「陽菜ちゃんは人気者だからね。この間も先輩に告白されたんだって?」
「え、そんな恥ずかしい事を誰に聞いたの❓ 勿論断ったけどね」
と口にしてニッコリと微笑んだ。
その、とびきりの笑顔に隣にいた男性も魅入っていた。

食事もとても美味しく盛り付けも綺麗だった。
思わずスマホを取り出し写真を撮ると
「亮介君、インスタやっているの?」
「やってないよ。」
「・・・」
「私のピザも写す?」と言って陽菜ちゃんがお皿を
少し斜めにして写しやすそうにしてくれたので
撮り、そのまま美月に送信した。
直ぐに既読が付いて
スタンプが送られてきた。

デザートが出てくる前に陽菜ちゃんが洗面所に行くのに席を外した。
美月に「美味しかったから今度、一緒に来よう。」
とメッセージを送る。
美月とは居酒屋やファミレスばかりだったから
今度、一緒に来たいと無意識に思い、メッセージにのせていた。

「だから化粧が上手いだけなのに・・・」
隣から聴こえてくる声・・スマホを見ている自分の耳に急に入った。
「エクステして、カラコン入れて可愛い格好して
自分の笑顔を計算している女をどうして見抜けないかな~
自分の彼氏ながら呆れる・・多分、ナンパしてるよ・・」
「あんな、浮気男止めちゃえば・・」
「あんな浮気男だけど、このレストランを予約できる力はあるのよ!」
「それだけ~?」
「もう、潮時だよね・・」
物騒な会話に顔を上げられなかった・・

陽菜ちゃんが戻って来て暫くして隣の彼も戻ってきた・・
ナンパって陽菜ちゃんを???
戻ってきた陽菜ちゃんは普通だった。
でも、隣の男の人は確かに陽菜ちゃんを見ていた・・
前に座っている女の人2人は陽菜ちゃんを
ジットリした視線で見て、冷ややかな視線を連れの男性に向けていた。
俺一人が背中から汗が流れた・・

そんな雰囲気を打ち破るようにデザートとコーヒーが隣に
サーブされ、俺達にもサーブされるが
俺達の席にはシェフが持って来てくれる・・・
一瞬、シェフの動きが止まったような気がしたが
デザートの説明を丁寧にしてくれた・・
その写真を又、スマホで撮り送信した。
さっきのメッセージには未だ既読が付いていないのが少し気になった。
「亮介君、意外」
「なにが?」
「結構、写真撮るんだ」
「うん。あまり撮らないけれど綺麗だから・・」
「その写真、どうするの?」
「お腹空いた時に見ようかな・・」
何故か嘘が口から出た。





















< 13 / 105 >

この作品をシェア

pagetop