私の好きな彼は私の親友が好きで

翌日、やっぱり何時もより早く登校する。
どんなに探しても美月は居なかった。

キャンパスの真ん中に立つと
自分以外、誰も美月を気にしていない・・
普段通りに楽しそうに笑い合っている。
俺は誰と笑い合っていたんだ。

教室に入ってもやっぱり居ない。
桐谷さんも居なかった。
居た所で話しかけられないけれど・・・

ボ~と教室に入ってくる生徒を眺めている。
フイに耳の側で「亮介く~ん」と
甘ったるい声に驚き、顔を上げると凄く近い距離に
陽菜ちゃんの顔があった。
今まで、こんなに至近距離になった事が無いので
吃驚する。
不思議な事に陽菜ちゃんの睫毛が気になった。
眼の端から端まで一本の乱れも無い 長い睫毛。
それなのに下の睫毛は短い。
俺の眼をじっと見る茶色い瞳の周りに、不自然に丸いリングが
薄く覗く。
レストランでの隣の女性たちの会話を思い出す。
「エクステして、カラコン入れて可愛い格好して
自分の笑顔を計算している女を、どうして見抜けないかな~」
確か、そう言っていた・・・

「陽菜ちゃんの睫毛長いね」そう口に出していた。
「うん。お陰様で」
「目も茶色なんだね」
「なんか私、色素が薄いみたいなの・・」
「そうだね。髪の毛も茶色いもんね」
「あ、これはカラーリングしているけど」
嘘と本当が混ざった虚無な会話。

美月の睫毛も長かったけれど、下の睫毛も長かったし
長さは均等じゃなかった。
あの、睫毛がエクステなのは美月のを見ていたから
解ったけれど、美月見ていなかったら解らねな~
女は怖い・・
隣の女性たちが話していたのは、陽菜ちゃんの事だったんだ。
もう一つ、あの時の隣のテーブルの会話を思い出す。
「あんな浮気男だけど、このレストランを予約できる力はあるのよ!」
(レストランを予約する力・・)
< 22 / 105 >

この作品をシェア

pagetop