私の好きな彼は私の親友が好きで
「美月さん、本当にイギリスに戻れると思っている?」
「え?」
「高遠社長が、君をイギリスに戻すとは到底考えられない。
 今日、なんでお見合いになったか考えた?」
ブンブンと頭を横に振る私。
今の薫さんの言葉が頭を駆け回っている。
「高遠社長は、娘さんのお婿さん候補を募っていると、噂で聞いたよ。」
「え、どうして?」
「結婚したら、イギリスに戻らないからじゃないかな?」
「そんな・・」
「高遠社長の溺愛ぶりは有名だからね。」
だからママが沢山買い物しても、怒られないで褒められると、
言った理由が解った。お見合いに着ていく服選びだったからだ!

あ~ 私のバカバカ!

「今、自分で自分の事、責めているでしょう?」
「へ、なんで解るんですか? もしかしてエスパー?」
「な訳ないでしょう。 美月ちゃん、顔に全部出ている。」

あ、今 私の事 美月ちゃんと呼んだ・・さっきは ”さん”だったのに。
それが何かくすぐったくて、胸の奥がトクっと鳴った。

「それは私が子供だって言いたいのですか?」と何時もの可愛げのない
私が口にする。
「そうじゃないよ。わりかし解りやすいと思ってね。でも、全部じゃない。」
「?」
「人はさ~ 自分を理解してくれていると思うじゃない、
カップルも、夫婦も、だけど実際は全然、理解出来ていないと
俺は思う。自分も相手を理解している、と思っているけどそれも
半分位だよね。口にしないと何も伝わらないよ。
その証拠に美月ちゃん、騙されて此処に来ちゃったんでしょ?」
「ぐうの音も出ません。母親の思っている事すら解りませんでした。」
「お、素直で良いね。」
「だからさ~ 俺達も話そう。」
「はい・・」

「あら~ すっかり打ち解けて・・百合ちゃん、私達が家族になるのも
時間の問題だわね~」
流石にその言葉にムッとする。

「ママが何も言ってくれないから、探り合っているだけです。」

「探り合っているって・・お前、いちいち、面白いな!」

「あら、それで良いじゃない! だってママが薫君を褒めても
それはママの感覚で、美月ちゃんの気持ちじゃないでしょ?
探り合って、知り合って、仲良くなって!時間はタップリあるから。
ね~百合ちゃん。」
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