私の好きな彼は私の親友が好きで

「美月ちゃんはどっち側に寝るのがスキ?」
「えっと、あまり気にした事がないので、どちらでも大丈夫です。」
「じゃあ、俺の右側に美月ちゃんね。」
「はい。お邪魔します」と口にしながら、ベッドに滑り込む。

あ~ なんて心地の良いマットレス。
身体が良い具合に沈む。

「なんて、寝心地の良いマットレスなの。」
「確かに、良いね。俺達のベッドもこのマットレスにしようか?」
「本当に、一緒に暮らすつもりですか?」
「結婚して別居とかないでしょう?それとも実家から出るのは、寂しい?」
「そうじゃなくて、そんなに急いで結婚や同居なんて・・今の感じだと
年明けには結婚して居そうで・・」
「何言ってるの、年内に間に合うように籍だけ入れよう。」
「え~~~~~~」
「そんなに驚く事?」
「当たり前です。だって人生の一大事ですよ。」
「どうせ、結婚するんだから、来年結婚しても、
明日結婚しても何も遜色無いと思うよ。」
「いや、ありますよ。」

(だって私、スキも愛してるも無い結婚なんてしたくない。)

勿論、そんな事は子供染みた考えなのは解っている、この婚姻は
お互いの家庭の事情だから。
でも、22歳 夢をみたい。と思うのは贅沢なんだろうか。
本来なら、薫さんのような素敵な人と私が釣り合うわけないのに、
そんな、素敵な人の配偶者になれる事で、満足しないとならないのは
理解していたが、外国映画のようにロマンチックに
プロポーズされたかった。そんな事を口にする事も出来ず、
曖昧に笑うしかなかった。

「美月ちゃん、手繋いで寝ようか。」
「えっと・・良いですよ」と言って左手を出すと
薫さんの大きな右手が、私の手の甲に重なり、スッポリ包み込んだ。
「小さくて、しなやかな手だね。」
「薫さんは大きくて温かい手ですね。」
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