私の好きな彼は私の親友が好きで

夕食は、以前連れて行ってくれた、先輩のレストラン。
今回はコース料理をお願いしていたみたいで、何も注文しないのに
次々とサーブされた。
「想像以上に美味しいですね。」
「もともとは先輩はフレンチを学んでいたんだよ。
美月も知っているレストランで、シェフをしていた事もある位の
腕を持っているんだけれど、そういうお店って敷居が高いだろ?
先輩は色々な人に、自分の料理を食べて欲しくて、この店を始めたんだ。」
「そうなんですね。道理で・・盛り方も美しいですよね。」
「ここは、俺にとっては特別のお店だから・・」
「薫さんの特別なお店に、2回も連れてきてくれて、有難うございます。」
心からそう思った。
少しでも、この人の特別で居たい。
「美月は俺の特別だから当たり前だよ。」
その言葉がどれほど嬉しいか、きっとここに居る誰も解らないだろう。
私は泣きたくなるくらい嬉しかった。
恋愛の気持ちは、一生持ってくれないかもしれないけれど、薫さんは
私を大事にしてくれている事は、伝わったから。

ハンドルを握る薫さんの横顔を、穴が開くほど見つめていると
「恥ずかしい・・」
「あ、ゴメンなさい。無意識に見惚れちゃって・・」
「美月って、本当に美穂さんに似ているよね。」
「え~前も言いましたけど、似てないですよ。私は父似です。」
「顔じゃなくて・・天然なところ・・」
「私、天然じゃないですよ。そんな事、言われた事ないです。」
「そんな事、他の男性に言われていたら困るよ。」
「?????」
「君が、天然を発揮するのは、誘惑する目をする時だよ・・」
「ゆ ゆ 誘惑ですか???」
私が男性を誘惑するスキルを持っているわけが無い・・
「そう、美月は無意識に俺を煽る・・」
「煽るって・・・」
どうやって、私は薫さんを煽っているのだろう?
うぅぅと考え込んでしまう。そのスキル自在に使いたい・・
そう思う私は卑怯ですか?
「美月、考えすぎないで・・美月は今のままで良いから」
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