私の好きな彼は私の親友が好きで

そこから薫さんの会社が始まる前日まで、殆ど、裸同然で過ごした・・
デートの時に薫さんが購入した、バスボムのセクシーダイナマイトも、
予言通り2人で入った時に使用した。
「ね、やっぱり2人で使った。」
クスクスと笑いながら薫さんは口にする。
私は一緒に入るお風呂が恥ずかしくてセクシーダイナマイトを楽しめなかったが、
薫さんは「へぇ~ こうなっていたのか!」とやけに感心していた。


「高校生カップルみたいですね。」
「美月は高校生の時からこんなにエッチなの?」
「違います!」
そんな会話をしながら又キスをする。そしてそれが引き金になり、
薫さんの指先、舌に翻弄させられる。
ベッドで、リビングで、洗面所で・・

薫さんが私を呼び捨てにするようになった、あの夜から
「美月、こっちに来て」「美月、お醤油とって」
「美月、美月」と呼ばれる回数が増えた。
その度に、私の心はザワザワ、ドキドキと音を立てる。
薫さんは知っているのだろうか、私が薫さんにどれだけドキドキして
切ない気持ちを持ち始めている事を・・

肌を重ねてからは、仕事で遅く帰って来て、疲れているのにも拘わらず、
毎晩、薫さんは私を抱く。
1度「疲れてませんか?」と聞いたら、笑いながら
「適度な疲れは、快適な睡眠を誘導してくれるからね。
それに、逆に元気になってきた。」
「そのようですね・・」
抱きしめられ、密着している部分に薫さんの熱を感じ、
下を向いた・・
顔を上に向けさせられ、オデコに、首筋にキスを落とされる・・
それに応えるようにしがみつくと、彼は心底嬉しそうな顔をし、
私を抱きかかえ、寝室に運ぶ・・
薫さんの首に自分の手を巻き付けながら

《今夜こそ、スキって、言って貰いたいと切に願う》

流石に、今夜は薫さんの方が意識を手放すのは早かった。

彼の額に掛かる髪の毛に触れながら、やっぱり今日も
欲しかった言葉を貰えなかった事に、落ち込む。

頭では理解している。お見合い結婚だ。
幾ら私に、優しくしてもそれは、これから家族になっていく
上での愛情だと言う事に・・

でも、私は愛を欲していた。

誰にもスキと言われない、自分の性が、どうしょもなく切なく苦しかった。
解っている、数日前には他の男性を想って、さめざめと涙を流し、苦しんでいた
私なんかに、恋愛感情が生まれるなんて事が無い事も・・
でも、一緒に暮らすうちに私が薫さんに惹かれ、好きになってしまったように
少しでも良いから好意を持って欲しかった。

ベッドに横になって窓を見ると、少し開いているカーテンの隙間から
月が見えた。
満月になり切れないその、月を見て自分の様に感じた。
中途半端。
薫さん、こんな風に想う私を嫌わないで下さい。

何時から自分がこんなに、欲深くなったのだろう、
薫さんは大事にしてくれている。
それなのに、強欲な私はもっと、もっと、と思ってしまう。

そんな風に思い悩んでいても日常は過ぎていく。
薫さんの平日の日常、7時に起きてから、30分間マンションのジムに行き、
食事して、新聞読んで、8:15にマンションのインターホンが鳴り、
お迎えが到着した事を知らせる。

用事が無い時は、18時には家に着いているが、それは稀で、
基本的には20時を過ぎての帰宅が多い。

たまぁに接待の会食があり、その時は必ず手土産で折り詰めを
一人前持ち帰ってくれる。
「今日の、食事が美味しくて、美月に食べて貰いたいから折詰にしてもらった」
必ず、そう口にする。
そんな生活に慣れた平日のある朝、
「今日、外で食事をしよう!」そう言って会社に向かった。
平日に珍しいなと思ってはいたけれど、私の料理のレパートリーも
底をつき始めていたし、平日のデートなんてウキウキする気持ちの方が大きい。
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