私の好きな彼は私の親友が好きで
入籍しても、私達の生活の変化はさして無かった。
大学が始まり、卒論とか色々あったが、最終学年だし、卒論も大方
完成し、手直し程度。ゼミは就職に関してスキルを上げて
送り出したい教授の理念で、他のゼミよりは余裕は無かったが
そこまでの負担では無かった。
だから、家事との両立は想像よりも大変とは思わないですみ、
それに、便利な世の中のお陰で、掃除機は、お掃除ロボが、
洗濯機は全自動で乾燥までしてくれる・・
マンションのクリーニングサービスを利用すると
殆どが下着と、リネンくらいしか洗濯機に入れない・・
(マンション暮らし・・快適過ぎる!)
私は、大学の講義の合間や、大学が終わってから語学学校に通っていたのに
プラスして料理教室にも通い始めた。
社会人になったら多分、その余裕は無さそうだから・・
平日はそうやって過ごしていた。
休日は薫さんとデートを重ねた。
私達は交際0日。と言っても過言では無いカップル。
結婚してからデートを楽しんでる。
映画に行ったり、ドライブしたり、美術館に足を運んだ。
出掛けると必ず、薫さんは私に洋服やバック、靴を買う。
クローゼットは薫さんが買ってくれた洋服の方が、
持って来た服より多くなった。
「そんなに洋服は要らない」と言うと
「4月から社会人だよ。ちゃんとした格好で行かないと・・
お客様だって来るんだからね。社員、一人一人が会社の看板を背負っていると
思って行動しないと駄目だよ」と経営者目線でお説教が始まる。
その、キラキラした瞳が好きだ。
そして、その言葉を口にしている声が心地良いとは、絶対に言わない。
3月。
5年間在籍していた大学を、飯島美月として卒業した。
薫さんの好意で、卒業式の前日から実家に帰っていた。
飯島美月ではあるけれど、高遠美月で卒業式に実家から会場に
両親と向かいなさいと・・
その夜、最後に4人で食事をとり、最後に両親へ
「今まで有難うございました。2人の娘に生まれて幸せでした」
と挨拶すると、母は泣き、父は私から目を逸らしたが、
背中が少し揺れていた。
袴に身を包んだ私は、高遠美月として最後 家を後にした。
卒業式に2組の両親と、旦那様が参列するという、自分の中では1年前では
考えられない位、賑やかな卒業式での記念写真を撮った。