私の好きな彼は私の親友が好きで
翌朝、6時に目を覚ますと彼の腕に抱かれたままだった。
この腕から出たくないとグズグズしていると
ピクピクと彼の腕の筋肉が動いた。
あ、もう直ぐ目を覚ます・・
慌てて、だけど起こさない様に静かにその腕の中から抜け出し、
洋服を着てコッソリ部屋を後にする。
静かに鍵をかけ そのカギにキスをして郵便受けに入れる。
「カタン」と鍵の落ちる音・・2度と触れる事が許されない鍵との別れの音。
静寂が支配している街に私の足音がコツコツと響く。
その音に気が付き、私を追いかけ抱きしめてくれたら・・
ありえない妄想に自分で自分を傷つけた。
振り返り彼の部屋を見つめ「さようなら」と小さく口にした。
自分にケジメをつけるために・・

着替えて大学に向かう
何時もの風景。何時ものメンバー
私だけが違う・・
「なにボーとしているの」と声を掛けて来たのは
高校からの親友 桐谷 彩
「おはよう。」
「なに、ボーとしてたの?」
「うん。私一人に居なくなっても世の中って変わらないだろうな~って」
眉をひそめ、泣きそうな顔をする彩。
「美月、本当に行くの?」
「行くよ!」
「言わないの?」
「うん、彩にしか言ってないよ」
「後悔しない?」
「しない。私ね 思っているほど強くなかったって気が付いた。
これ以上此処には居られない。」
「キチンと話してから行ったら?」
「それは無理」
「彩が思っている以上に複雑なんだよ」
「案外、そんなに複雑でもないかもよ」
「私がこれ以上耐えられないんだ・・」
その言葉に彩は顔を歪めそれ以上は口にしないで
私の腕を自分の腕で絡めた。
「私は、美月が何処に行っても何をしても、ここに居るから」と言って
私の胸を2回トントンと叩いた。

彩は私と亮介の事を何となく気が付いている・・
私が言わないから知らないフリをしてくれているけれど・・
そしてそんな亮介を良く思っていないし、何故か陽菜と仲が良くない。
そして陽菜も彩を苦手としていた。
だから5人で出掛ける事は殆ど無かった。
彩は不思議な子だった。群れるわけではないけれど人付き合いが
悪いわけでも無い。それなのに陽菜が居ると ス~と居なくなってしまう。
2人とも親友で同じように接してきたつもりだったが
この件に関しては陽菜には言うつもりも、相談もしなかった。

これ以上嫌な女になりたくなったかのかもしれない。


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