片翼を君にあげる①

でも、世の中は上手くいかない。
宣言通り、13歳になって夢の配達人としてデビューしたツバサはあっという間に昇り詰めて行った。
一年後には金バッジになって、その一年後には金バッジの中でトップの成績をあげちゃって……。15歳10ヶ月って、お祖父ちゃんを上回る最年少記録で白金バッジになれるんじゃないか?って騒がれた。

一方の私は、調査員は夢の配達人の調査をしたり、時には危険から護る仕事だから年齢制限が厳しくて、18歳になるまでおあずけ状態。
なかなか同じ土俵には立てないもどかしさもあった。

でもね、それ以上にツバサには白金バッジになってもらいたかったの。
だから、ツバサが最高の夢の配達人と騒がれていた白金バッジであり師匠のミライさんと、下克上をするって決まった時は自分の事のように嬉しかった。

下克上は、階級が下の夢の配達人が自分より上の階級の夢の配達人に個人的に勝負を挑んでバッジを奪い、のし上がる制度。
Cランクの青銅(ブロンズ)バッジとBランクの(シルバー)バッジの夢の配達人は数に限りがないのに対し、Aランクの(ゴールド)バッジは7人、Sランクの白金(プラチナ)バッジは3人と、人数制限がある。
故に、普通は年間の業務成績を見て最高責任者(マスター)がランクを決めるのだが、「腕に自信のあるやつは自力で勝ち取れ!」と下克上なる制度が設けられているのだ。

しかも、ミライさんが持っている白金バッジは昔お祖父ちゃんが持っていた特別な白金バッジで、ツバサにとっても特別なもの。
きっと、白金バッジになるのならば狙うのはそのバッジしかなかったんだと思う。
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