独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~
「撫子は満喫しているなあ」

親族席から、雛壇の撫子さんと恭さんを見守って連さんが言う。連さんも感慨深そうだ。妹と親友の結婚式だもの。きっと、連さんは亡きご両親の分も、撫子さんの行く末を案じ責任を感じていたのだろう。今日の良き日を迎えられてよかった。

「結婚式は女性がお姫様になれる日だそうです。撫子さんはいつもお姫様のように綺麗ですけれど、今日は一段とお綺麗ですね」

連さんが私の顔を覗き込む。いつも屈み込むようにして視線を合わせてくれるのだ。

「やはり、俺たちも式を挙げようか、初子」
「え」
「俺と叔父の都合、また撫子の式が八月だと先に決まっていたから保留にしていたけれど、結婚式はした方がいい気がする。俺も初子をお姫様にしてやりたい」

何の臆面もなく言えてしまう彼は本当にすごい。私は照れくさい気持ちを堪え、答えた。

「いえ、私はこだわりませんので」

連さんは私を妻に望んでくれている。後継者に決まって、私の契約上の任期が終わっても、結婚生活を続けたいと希望している。母の罪から自由になれと、自分の隣にいることに障りはないと、連さんは言う。

それが彼の親愛の情なのは伝わってくる。熱烈な恋ではなく、縁あって家族になった私たちに存在する情愛。
だけど、それが長く続く感情なのか私にはわからない。
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