独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~
夏が終わってすぐに、頭取は連さんを文治銀行の後継者として正式に指名した。
ここ数年の本店営業部の目標達成率、収益の増大から、当然の結果と言える。古参幹部は連さんが結婚して夜遊びをしなくなり落ち着いたと評価していたらしいけれど、それは印象操作のレベル。
結局のところ、連さん持前の能力と人柄で引き寄せた結果に過ぎない。本店営業部のAI化を進め、フィンテック企業と共同で新しい金融サービスも開発中だ。
毎日身を粉にして働き、成果をあげる連さんに、対抗馬を立てようと躍起になっていた一派も、黙らざるを得なくなっていた。役員会で正式に内定した後は、一転静かなものだ。
対抗馬に立てられそうになっていた恭さん曰く、『勝ち目がない闘いは挑まずに、定年まで安定したポジションにいられる方が大事って気づいたんだろう』とのこと。それだけ、連さんの立場は圧倒的ということだ。

次期頭取として内定した連さん。そして、今日は連さんの後継者内定お祝いである。
本店営業部の行員は契約社員にいたるまですべて招かれ、私の家族や越野支店長も奥様と仙台から呼ばれている。会場は撫子さんたちが式を挙げたホテルのパーティー用の中庭を借りて、盛大なガーデンパーティーをしようと計画してきた。ガーデンパーティーにしたのは、連さんの希望。野外でピクニックみたいな明るく気楽な会にしたいそうだ。

「それにしても、お姉ちゃんすごい人のところにお嫁に行っちゃったわね」

窓の外を眺めながら、美雪がしみじみ言う。だいぶ今更な感想だ。
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